長期経営計画作り合宿セミナー

わが社の借入限度額(その1)

 社長さんたちと資金計画やB/S計画の勉強会をしていると、わが社はどこまで借入ができるだろうか?という相談によくあう。これには2つの面がある。一つは、支払利息の負担にどこまで耐えられるかという損益面からの借入限度。もう一つは、銀行はどこまで貸してくれるだろうかという点からの借入限度額である。
 初めの、損益面からの借入限度額を計る判断基準として、支払利息分配率という考え方を紹介する。労働分配率については、大方の人が知っているであろう。付加価値の中に占める人件費割合である。アメリカのラッカーという経営コンサルタントが、アメリカの大企業の第2次大戦の戦前から戦後にかけて生き残っていた会社は付加価値に占める人件費の割合が、ほぼ40%であったという統計的事実を発見した。そして、企業存続の条件として、その会社の付加価値の中での人件費割合(労働分配率)を一定に保つ必要があるという原理を提唱したのである。世に名高いラッカープランである。
 さて、支払利息分配率とは、付加価値の中に占める正味の支払利息の割合である。私は3%が上限と考えている。これは、私のセミナーに参加したある社長との話の中に、その社長は、自社の支払利息額が売上の5%に収まっていると資金繰りがスムースにいく、という経験を話してくれた。私は、その会社の付加価値率は65%だったので、売上の中の5%はその会社の場合、付加価値に対しては約3%になるという計算をした(5%×0.65=3.25%)。
 付加価値率は、その会社の業態や、属している業界によって様々であるから、支払利息の限度額を売上基準で5%とするのは、その会社には当てはまっても、付加価値率の違う他の会社には必ずしも当てはまらない。しかし基準を付加価値額にとっての支払利息分配率であれば、きわめて一般的、普遍的になり、どの企業にも当てはまることになる。
 その後セミナーのたびに、私なりに秘かに、各社の支払利息分配率を検証してみたところ、3%という数値はほぼ妥当な数字という感触を得た。
 この3%という数字を使って、わが社の借入限度額を計算する方法は次のようにすればよい。
 例えば付加価値額が10億円の会社の3%は3千万円である。この3千万円をその会社の平均借入年利率で割り返してやれば、借入限度額が計算できる。この例では、平均利率を1%とすれば3千万円割る1%で30億円が借入限度である。