長期経営計画作り合宿セミナー

階段差の理想値はいくらか

 財務体質の改善,あるいは財務体質が強い弱いというとき、どのようなバランスシ-トの会社が強く、どのようなバランスシートなら弱いのかを、大局的になお且つ具体的にB・Sチャートで見てみよう。
 一言でいえば、高い右肩上がりの階段差のあるB・Sチャートは強いといえる。右肩上がりの階段になっていないのは、流動比率は100を切っている状態である。
 流動比率が100を切っているのは、何か不測の事態が起きた場合に、手持ちの資金と短期的に入金する資金を合せても、短期の支払いに不足するという状態であり、即、短期資金のやりくりに支障を来す危険がある。銀行はなかなかお金を貸してくれない。流動比率が100を切っても許されるのは、大規模小売業、いわゆるナショナルチェーンくらいである。
 大規模小売業は売りは現金、支払いは1~2ヶ月後という仕入先への支払いを延ばすことによって、毎日の現金売上げ分が支払いするまで溜まっていく。大規模小売店は、支払いを延ばすことで、自社の金庫の中に仕入先のお金が溜まる仕組みを作っている。この仕組みを回転差資金(回転の速い販売資金と,回転の遅い支払い資金の差によってできる資金―本来は仕入先のお金)と呼んでいる。呼び名は格好良いが,要するに「他人のフンドシ」である。
 流動比率が100を切っているもうひとつの業種は電力会社やガス会社である。電力会社やガス会社は地域独占企業というだけではなく、販売商品が蓄積の効かない性質があり、作ったものがすぐ買い手に渡り、即売上になり、しかも、確実に翌月には回収されるという特殊な業種である。
 小売業は金庫に他人の金が余っており、電力会社やガス会社は製品イコール現金といってよい特殊な業種なので流動比率はマイナスでも経営が成り立つのである。
 では、一般企業にとって理想とする流動比率はいくらなのであろうか。現金主体の小売業や飲食業で130%以上、掛売り主体の卸業やメーカーで180%以上というのが流動比率の理想値であるというのが、私のこれまで30年以上の資金計画専門コンサルタントとしての経験から得られた数値である。
 流動比率を高めるためには、自己資本の充実が欠かせない。自己資本は業種を問わず、30%ではじめて一人前。理想としては40%以上である。