― なぜ階段差は右肩上がりが理想か ―
企業の短期の支払能力をあらわす指標に「流動比率」がある。B・Sチャートの階段線の左と右の大きさの比率である。計算式は 流動資産÷流動負債×100 である。
この数値は200%超(右肩上がり)が理想といわれている。これは1929年以降のアメリカの大恐慌を生き残った会社を調べたら、流動比率が200%超の会社が生き残っていたという統計的事実に由来している。
これを図にすると、前回示したように赤い階段線は右肩上がりとなるのである。
ところで、わが国の企業は、戦後ゼロから復活した企業が殆どで、その復活は銀行からの借入金や企業同士の信用を梃子にして行われたため、どうしても借金過多という状態から抜け出せなかった。したがって、戦後は、大企業といえども、流動比率130%を超えていればよしとされた時代がしばらく続いた。
わが国の大企業の財務体質が流動比率や自己資本比率を含めて急速に改善されたのは、証券市場で時価発行が盛んになり、大企業の資金調達が間接金融から直接金融にウエイトが移るようになってからである。
しかし、わが国の中小企業の場合は、証券市場からの直接金融の道はまだまだ厳しく、資金調達は銀行や企業間信用に大きく頼らざるを得ないため、いまだに流動比率や自己資本比率は低い率に止まっている企業が多い。ヘラクレス(ジャスダック)やマザーズの恩恵を受けて証券市場から資金調達ができるのは、385万社といわれている中小企業のごくごく僅かでしかない。中小企業の財務体質改善は外部の力に頼るのではなく、自力でやらざるを得ないのである。