長期経営計画作り合宿セミナー

長期借入返済収支分岐点

 社長さん、あなたは、今年度銀行にいくら返すと約束しているか知ってますか?またその約束を果たすにはいくらの売上と利益が必要か、わかっていますか?
25年ほど前、バブル景気の末期だった。中小企業の景気も絶好調、銀行はいくらでも金を貸してくれるという、今から考えると社長にとっては、ウソみたいに恵まれた時代であった。
 当時私(原田)は、勉強熱心な社長さんたちと、リコーのマイツールというパソコンを使って、経営計画、特に資金計画、B/S計画を作るという勉強会をやっていた。その勉強会の中で私は、かねてからの持論である、「経営計画は銀行との約束どおり長期の借入を返済できるキャッシュフローと、そのキャッシュフローを確保できる利益から逆算しなければならない、と強く主張しました。
 そのときでした。勉強会の中でも特に熱心なリーダー格の社長から「今銀行がいくらでもカネを貸すと言ってるときに、カネを返すことから計画を作るなどもってのほかである。そんな計画など、社長のヤル気に水を指すようなものだ」と強くしかられた。
かつて私は、日本が高度成長の真っ只中にあって、強気の経営者はこぞって、それ行けドンドン、銀行からカネを借りてでも会社を大きく伸ばせという経営者の下で、資金担当を任されていた経験がある。「新しい会社を作るから、銀行へ行ってカネを借りて来い」、「設備を新しくするからカネを借りて来い」と言われて、あっちの銀行、こっちの銀行と、金を借りまくるのが仕事であった。借りたお金は返さなければならない。当然のことである。借りた後始末は、返済する算段である。本当は、借りる前に返す算段が必要なのである。つまり銀行の借入交渉には、借りたお金を返せる、長期の収支計画が必要なのである。

 いつしか私は、借入のための長期の収支計画を作るときに、その収支計画表の下に3行を書き加える習慣が付いていた。その3行とは、返済財源、返済額、それと返済過不足の行である。
 返済財源は、減価償却費+税引き後利益、つまり、今で言うキャッシュフローである。理想としては、返済額が、このキャッシュフローの80%以内に収まっていることである。最悪でも、キャッシュフローの範囲内で収まるような収支計画が立てられるかどうかが重要なポイントである。もし3行目の過不足欄に、マイナスが続くようなら、その借入返済は必ず資金不足を招き、ひいては倒産へまっしぐらとなりかねない。
 長期の返済は、キャッシュフローの範囲内。これは、企業生き残りの条件です。ゴーイングコンサーン、生き残りを目指す会社は、計画を作るときは、先ず、約束した返済額を確かめ、そして、その返済に必要な売上利益から入ること。これを肝に銘じてほしい。
 幸い(?)、バブルがはじけ、貸し渋り、貸し剥がしが激しくなって初めて、私の「返済に必要な利益。売上から計画するようにと」といった持論が素直に受け入れられるようになった。