損益計算書に興味を持たない社長はいない。しかし貸借対照表が読めて、その内容に興味を持つ社長は少ない。バランスシートが読めない社長は、社長失格である。
改めて言うまでもないが、企業の決算書には貸借対照表(ストック)と損益計算書(フロー)がある。それに2000年の3月から加わってきたのが,キャッシュフロー計算書である。これはストックの1科目である「流動性現預金」の1年間の増減を3つの原因(営業活動・投資活動・財務活動)に分けて説明した表である。
ところで,なぜバランスシートなのか。
これは、これから益々激化する競争時代を勝ち残っていくために必要な企業の体力を計るものは、ストックの質の良し悪し、つまり、貸借対照表の中身であって、フロー(売上)の大きさだけでは量れないということである。
家計でもそうであるが、いくら収入が多くても、支出も多く、さっぱり貯金や資産がない人は、必ずしも豊かであるとはいえないであろう。むしろ派手な生活の裏側には,意外と多額の借金があったりすることもよく見うけられる。
日本も戦後、ヨーロッパに追いつき追い越せをモットーにして世界第3位(1968-2010は2位)の経済大国になっている。しかし、社会的なストックである歴史遺産や公共資産、社会的なインフラについては必ずしもイギリスやフランス、イタリアにはまだ及ばないという点も多々ある。
企業の場合には単純に国や家計との比較はできないにしても、自己資本比率が高く、借金も少ない会社の方が、生き残り、勝ち残りやすいことはいうまでもない。
かつて都銀の一つであった北海道拓殖銀行が倒産して、第2地銀の北洋銀行が取引先を引き受けたとき、引き受けるかどうかの物差しにしたのは自己資本比率10%以上という基準であった、と仄聞している。金融不安の中で貸し渋りにあって倒産した企業のほとんどは、自己資本比率が低いか債務超過の企業である。
会社が、ゴーイングコンサーン(継続体)として勝ち残っていくための保証は、売上げ(フロー)の大きさではなく強い基礎体力、つまり強いバランスシートである。日本一を誇ったダイエーの売上げは、ダイエーという会社の生き残りを保障するものではなかった。
企業の勝ち残りを保障してくれるのは、自己資本の充実以外にない。「元気にするシステム」設計の基本を「目的は勝ち残り。目標は5年後のバランスシート」とする所以である。